色褪せたバラ
第 7 章 1/19
―――――
―――――――――
その日
目が覚めるとすでに
直樹さんの姿はなかった。
「‥‥直樹さん?」
辺りは薄暗くて
妙な静けさが部屋中に漂う。
ベッドから起き上がり
キッチンや廊下や洗面所
部屋中を探してみたけれど
直樹さんはいなかった。
「‥‥‥‥‥。」
そういえば昨日
明日 早いって
言ってたっけ ‥‥
さっきまで気にならなかった雨の音がザァアア――‥と部屋中に響き渡る。
雨 降ってたんだ ‥
日のないどんよりとした空は
殺風景なこの部屋に少しの明るさも与えてくれない。
まだ朝早いのに
私は部屋の電気をつけた。
部屋が一気に明るくなり
私はテーブルに置かれた
くるみパンに気がついた。
まだ
ほんのりと
温かい――‥‥。
私はカーテンを少しだけ開き
窓の外のどんよりとした空を見上げた。
「直樹さん、どこ行っちゃったのかな‥‥。」
ぽつりと呟いた
私の小さな独り言は
激しく叩きつけられる雨の音へと吸い込まれていった
――――――――
―――‥‥
- 144 -
前n[*]|[#]次n
―Bookmark
⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?
<