愛都市の異常な日常
#[アンチマヨネーゼ](1/7)
#アンチマヨネーゼ
 今宵の天候とは無関係に明るい得手亜区の地下街。待ち合わせ場所の定番スポットであるダイヤモンド広場を、帰宅途中のサラリーマンと夜遊び中の女子高生が行き交う。この街のいつも通りの光景だった。
 ただ一点を除いて。
 ビジネズバッグにスーツ姿の男が見上げる広場の電光掲示板では、地元のニュース番組が放送されていた。それは異常な内容だった。
『A女子高校の生徒死亡 マヨネーズキラーの仕業か』
 女性アナウンサーの話によると、色葉区のとある路地裏で、問題の学校の女子高生が性的暴行を受けた状態で死亡しているのが見つかった。これだけならただの強姦殺人だが、問題は犯人につながりそうな唯一の遺留品の、現場周辺にまき散らされた大量のマヨネーズだった。その量、市販の500mlのボトル換算で三本分。このような犯行がこの二か月で計四回発生している。だからこそこの事件の犯人は、マヨネーズキラーと称されているのである。
 電光掲示板越しにこの事件を知った男の中では、憤りのような感情は生まれなかった。その代わり生まれたのは、また一晩中車を走らせるのは骨が折れるな、という憂鬱な気分だった。
 そんな彼の前に現れたのは、地元の高校の制服に身を包んだ、高身長の少年だった。彼は無言で男の前に歩み寄ると、顎で男に合図を出した。地上に出て車を出せという意味だ。
「なあ、今日はやらなくていいんじゃないのか? あいつだって、連続でしやしねえよ」
 男は人目を気にして少年の耳元で囁くように提言する。彼のほうが少年より背が低い分、


- 1 -

前n[*]|[#]次n
/766 n

⇒しおり挿入


⇒作品レビュー
⇒モバスペBook

[編集]

[←戻る]