[9.禁じられた展開](1/29)
瞬に会わずに夏休みも半分が過ぎた。
予備校の授業は思った以上に厳しく、姉の亜沙子とも瞬とも、時間帯が違うため、顔を見ることすら叶わなかったのだ。
今日も会えなかったとため息をつき、夕方の道をいつも通り予備校を出てまっすぐ帰る。
その道で目の前を、瞬が歩いていた。
香弥子は心臓が激しく鼓動するのが分かった。
後ろ姿を見ただけで、めまいがするほど苦しくなる。
亜沙子の姿はなかった。
瞬と…隣には見知らぬ女性。
香弥子は足を止め、二人を見つめた。
ハッキリと顔は見えないが、時折見せる横顔がとても美しく、大人の女性だと分かる。
瞬は嬉しそうに話している。
(誰なんだろう…)
そして、寄り添うようにして歩きながら、女性は瞬の腕に自分の腕を絡ませた。
香弥子は呆然とその一部始終を眺めたまま、声をかけることもできず、二人をただ見送った。
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