[8.切ない優しさ](1/8)
4畳ほどの小さな部屋で、荷物もない代わり、明かりもなかった。
二人が足を踏み入れると、後ろで扉が大きな音をたてて閉まった。
クローゼット代わりに使っていたのだろうか、壁に棚が取りつけられている。
高い位置に小さな窓がついており、薄暗い部屋でなんとかお互いの顔が見えた。
櫂の顔は無表情で血の気がないのかと思うほど白かった。
櫂は背中を向けると、静かに切り出した。
「アニキと…付き合ってるの?」
「まさか!」
香弥子は大きく首を振った。
「私が勝手に好きになっただけ。
私が勝手に…キスしてただけなの。
シュン君は私のことなんて…」
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