開いた扉
[開いた扉](1/8)
扉に佇む一人の男…
名を『星野カゲロウ』という。
この男、歳は20代前半、黒いUNIQLOのコートを羽織っている。
辺りには、煌々と光る電灯が一つ。
その扉、黒いモノクロのデザインをしている。
男は言った。
「扉、これはなんだ?」
扉は答えた。
「カゲロウ様自身で御座います。何か問題でもお有りでしょうか?」
その扉、鍵穴の向こう側から自分と全く同一の声を発している。
カゲロウは答えた。
「扉にオレの存在を知られてしまうとは…、扉、どうしてオレの存在を知った?」
扉は答えようとしない。
男は更に続けた。
「扉、オレの存在は決してわかるハズではないのだ…」
扉は答えた。
「いえ、カゲロウ様のことは誰もがご存知ですよ!」
男はその場にしゃがみこみ、何を始めたかと思うと扉をこじ開け始めた。
扉「止めて下さい、カゲロウ様。この扉は決して開くことは有りません!!」
カゲロウ「いや、オレは世界一の鍵職人、開けられない扉はないはず…」
男は黙って、解錠作業を行った。しかし、扉は開かれない。
カゲロウ「何故だ、こんな扉、簡単に開けられるハズではないか!」
扉「だから申しているでしょう、決して開かれないと…」
カゲロウ「そんなハズは決してないのだ!!」
男は暫く黙ったまま、そのまま作業を続けた。しかし、一向に扉は開く気配がないのだ。
男は困り果てた。
カゲロウ「此所はオレの家だったハズではないのか?」
扉「貴方様の家で御座います、カゲロウ様。しかし、決して開かれない扉なのです。」
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