Dear…

ミライ…?(1/6)







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家でテレビを見ながらまったりしていると、玄関の鍵が開く音がして唯人が帰ってきた事を知らせる。
「おかえり!」
「ただいま」
スーツの上着を脱いでネクタイをぐっと緩める唯人に、一枚の綺麗な封筒を手渡す。
「これ、届いてたよ」
そう言うと唯人はチラッと封筒を見て、「またかよ」なんて、ため息をつく。
結婚式の招待状だ。
おめでたい話なのに

「大学の友達?」
「いや、中学の。地元一緒の奴」
最近になって、私も唯人も結婚式に招待される事が多くなった。
よく考えたら、もう24歳。
結婚なんてまだまだ先の事のような気がするけど、結婚してもおかしくない年齢なのだ。

「結婚、ね」
唯人は招待状を眺めながら呟いた。
私も結婚を意識しないわけじゃない。
むしろ、周りの友達が幸せになっていくのを見て羨ましいと思うくらい。
「どこの式場?」
あ、この辺だ。車で30分くらいのとこ」
「じゃあ近いね」
「ん。よかったー」
そんな事を話してからご飯を一緒に食べ、リビングのソファーでくつろいでいると、唯人は、またさっきの招待状を開いていた。

「最近みんな結婚すんな」
「ね」
「まだ早いような気もするけど」
「でも24だよー?」
「適齢?」
「女の人は多分」
唯人とこんな風に結婚の事について話したのなんて初めてかもしれない。
なんだか今まで、知らず知らずのうちに遠ざけていたのかも。

「歳におきかえると適齢だけどさ、今の自分がって考えるとアレだよな」
「ふふ、そうだね」
「心は?」
へっ?」
急に唯人は私のほうをじっと見る。
「24で結婚する予定だった?」
「予定?」
「女の人ってさ、いくつで結婚していくつで子ども産んでって割と考えてるんでしょ?」
そりゃあ、私にだって恥ずかしいけど未来予想図はWくらいまであったりもした。
「心はそんなの考えないか?」
「かっ、考えてるよ!私だって!」
「ふーん?」
「唯人には言わないっ!」
そう言うと、唯人は笑った。

「心はいい家族つくりそうだな?」

なんか、それって
嬉しいけど、なんか違うような
ちょっとだけ悲しい。
だって、それじゃあ
他人事みたいだ。







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