Dear…

ココロの奥(1/9)







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-唯人side-

上司から言われた膨大な数の書類をなんとか作り終え、パソコンを閉じる。
明日は一日営業回りだな
一日パソコンと格闘してるよりはいいか。

スマホを見ると心からのメッセージが入っていて自然と顔が緩む。
でも最近脳裏をチラつくのは、あの男。
心が風邪ひいて寝込んだ時ウチにきた例の男。

実際のところ気になって仕方ないんだけど、心に聞いてもただの友達って答えるだけ。
俺からしてみれば、とてもただの友達には見えねぇけど
嫌いな相手に見舞いなんて持ってくるわけがない。
男がわざわざ見舞いなんて持ってくるのは、気があるか若しくは下心があるか。
でもきっと心にはなんの悪気もないし、ましてやあの男に対して友達以上のなんの感情もない………と思いたい。
大体、雨の中一緒にいたってのも気にくわない。
まぁ結局全部、嫉妬なんだろうな。

そんなことを思いながら帰り支度をしていると、突然同僚から電話がきた。
はい」
「木崎ー?今呑んでるからお前もこいよ〜」
電話の向こうはガヤガヤとしていて、いつもの居酒屋にいることがすぐにわかった。
「珍しくみんないるからさー、絶対こいよ?」
「あー……いつものとこ?」
「そうそう!……あ!白石も残ってるから一緒に連れてきて!じゃーなー」
一方的に切れた電話。
飲みとか久しぶりだしまぁ、いいか。

白石が残ってんのは知らなかった。
こっちにはいないから向こうで何か仕事してんのか。
席から立ち上がり、隣のオフィスを覗くと、やっぱりそこに白石がいた。
………あ、まだいたの?」
白石も俺と同じように、俺がいたことを知らなかったみたいだ。
「仕事終わんなくてさ」
「さすが優秀な部下。信頼されてる証拠だね」
「嫌われてるからかもよ?」
冗談を言うと、白石はクスッと笑う。

「飲みの話、聞いてた?」
……あー、そういえばお昼にそんなこと言ってたかも」
「白石のこと連れてこいって言われたんだけど、どうする?」
「木崎くんは?」
「行くけど」
「じゃあ私も行こうかな」
白石はそう言ってパソコンの電源をおとす。







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