落 書 き


▽落書き (1/9)








「それ、見せて」


昨日の席替えで
隣になったばかりの君が

指差したのは
数学の問題集



「いいよ」



私はそう言って
君と自分の机の真ん中に
問題集を開いておいた



すると、君は
シャーペンを手にもち



『ありがと』



と、その問題集に書く



私は微笑んでから、前を向き
再び授業を受けはじめた


しかし君は、まだ
問題集に
何か書いているようだった


なんだろうと思いながら
見てみると


『数学好き?』





……………は?






「だいっきらい!」




授業中だということを忘れて
私は大きな声を出してしまった


すると、君は


「しーっ」


と人差し指を立てながら言って

『一緒一緒』


と、笑いながら問題集に書く


それから君は
私の問題集を通して
いろんなことを聞いてきた


クラスは一緒だったけど
ぜんぜん絡みがなかったから


私もたくさん質問した

もちろん、問題集を通して



時々、君が描く先生の似顔絵が
とてもおもしろくって


笑いをこらえるのに
必死だったっけ…



私は、やさしくて
かっこいい君に
次第に惹かれていった



だから、
君とそうやっている時間が
とにかくうれしくて
とにかくしあわせで


この、数学の授業が
ずっと終わらなかったらいいのに



なんて、考えてたんだ









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