蒼と狼の物語
[目覚め、そして…](1/24)
目覚めた蒼子が初めて見たのは、少し窶れた沖田の顔だった。
覗き込まれてるその状況に戸惑いつつ、少しの思考の後、全てを理解する。
あぁ…また倒れたのかと。
沖田の表情は安心と過労が見え隠れしていて、申し訳なさを感じて苦笑いを返せば、いきなり泣かれた。
「具合はどうだ?」
そんな泣いて話にならない沖田の背後から、斎藤が顔を出す。
「少し苦しいけど大丈夫です」
にっこり笑えば、安心したように斎藤は小さく笑い返してくれた。
「皆に知らせてくる」
返事を待たずにすたすたと部屋を出ていってしまって、蒼子は目の前の沖田に目をやる。
今だ泣いている沖田をただ、見詰めてハッとする。
「……沖田さん、身体は大丈夫ですか?」
「っ、蒼子さんの……」
沖田の声が小さくて、蒼子はん?っと首を傾げる。
「えっ?なんて…?」
「蒼子さんの馬鹿!!」
「………………………」
うつ向いていた顔を沖田があげれば、強引に拭った涙の後が伺える。
その表情は純粋に怒っていて、いつもの腹黒い怒りは感じられなかった。
「いつまで寝てるつもりですか!年はとっくに越しちゃって貴女が寝てる間に沢山色々あったんです、話したくても話せなくて…起きたと思ったらわたしの体の心配して!!」
大馬鹿者!そう叫ぶ沖田に、蒼子は目を見開く。
ひとしきり言い終わって、沖田は蒼子の手を握りしめる。
「……すみません。ことの発端はわたしなのに…余裕がなくて」
そんな沖田に蒼子は力の限り微笑んだ。
「沖田さ〜ん、私まだ生きてますよ?謝らないでください」
色々あったんですよね?なら話を聞かせてください。
そう言えば、沖田は一筋涙を溢す。
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