蒼と狼の物語
[覚悟](1/17)


牢にいる咲を冷たく見下ろして、土方は口を開いた。

「おい、そろそろ吐いたらどうだ?此処にいるにはちっと堪えるだろ」

声を低くそう言えば、泣きそうな顔で此方を見てくる女中の咲。
思えばこんな状況になるまで名さえ知らなかった…。

「言わんよ、そんな口の軽い女やったらこんな場所に7日も居んわ」

そう言われてしまえば、そうだったと笑うしかない。
ふんと鼻をならせば、咲はやはり悲しげな表情で此方を見てきた。

「監察方から裏は絞れてるんだ、だがな俺はてめぇの口から聞きてぇ。何を言われたら会って一日もたたねぇ奴に殺意を抱ける?」

「……言わんよ…そう言うたやん」

そんな咲の言葉に土方は被せて話す。

「¨鈴木孝太郎¨この名に覚えはねぇか?」

「…………………っ!」

ピクリと跳ねた彼女を、土方が見逃すはずもない。

「奴は間者だ、良いように使われて此処で無駄死にする気か?」

うつ向いて話さなくなった咲を真っ直ぐに見詰め、土方は更に言う。







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