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[After story1.1](1/15)

〜side K〜



ーーー。

無言の車内。

寒そうに震えるミナを横目にタバコに火をつけた。

『ーー。』

この時期の海なんてほぼ貸切状態。
適当に停めた車のエンジンをかけながら思いを巡らせる。

さっきの会話。

俺、なんかしたっけ。


〇〇〇

『ねぇ?』
「ん、」
『私、ワガママ?』
「ーー。」

何をいきなり。
減速して車を停めたらミナが口を開いた。

ーーワガママ?
ほんとこいつはこうーー急に訳分かんねぇことを言い出す。
さっきまで美味そうに飯食ってたくせに。
笑ってたくせに。
どこでどうしたら急にそんな暗い表情になるんだ?


「降りる?」
『うん。』

確かに今日のミナは少し挙動不審だった。
ユキんとこが産まれるから気持ちが昂ってんのかな。なんて思ってた。

どうやら今日1日の挙動不審はユキんとことは関係ない理由だったらしい。

外に出て後悔。
《降りる?》なんて聞かなきゃよかった。
冬の海。とにかく寒い。

上着を羽織って2人で歩いてーー段差のとこに座り込んだ。


「ワガママって例えば?」

ワガママにも色々と種類がある。
確かにミナは聞き分けのいい女ではない。
全く手がかからないわけでもない。
でも不愉快になるワガママを言ったりはしない。

『仕事中に暇だからってメッセージおくったり。
ショウ君にケーキ買ってきてもらったり。
今日だって病院に連れてってもらったり。
ごはんだってね、いつも美味しいものをご馳走してくれてるけど最近の私、それに慣れちゃってる。
値段だってーー』

何故か、ここで小さく息を吸うミナ。

『というかね、生活の一個一個がそうなの。
ほんと小さいことでも。
私、ケイの優しさに甘えてどんどんワガママになってる。』

「俺、優しい?」

優しくはないと思うけど。
ってそれ、前も言わなかったっけ。

《仕事中に暇だからってメッセージおくったり。
ショウ君にケーキ買ってきてもらったり。
今日だって病院に連れてってもらったり。
ごはんだってね、いつも美味しいものをご馳走してくれてるけど最近の私、それに慣れちゃってる。》

それって優しいのか?

別にメッセージは優しくしようと思って返してるわけじゃない。
暇させたくないなって思ってサツキを行かせただけ。

ケーキだって食いたいなら食わせてやりてぇなって。むしろ俺のワガママ。


最近はお互いの仕事のすれ違いでゆっくりと一緒にいれる時間が少なかった。
それでもこいつの性格は、かなり理解してるつもり。

ミナはなんて言うかーー
元々あまり不平不満を口に出さない。そのくせすぐに表情にでる。

《言いたいこととかやりたいこと、何でも言え。困った事とか、またミズキに何かされたりーー遠慮すんな。》

いままで、ちゃんと口に出して物を言え。そう何度も伝えてきた。

最近は甘い物が食いたいだの暇だのと、色々と要求をしてくれるようにはなってきた。

正直面倒くせぇな。なんて思いつつもそれが嬉しかったりもする。

ーーそう。
嬉しいんだ。




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