後悔
[男と女と兄と妹](1/23)
急いでカウンターからドアの前へ行くと、勢いよく外からドアが開いた。
「アカリ!」
「ケンジさん…!」
ひと呼吸置いて、「お帰りなさい」と私が微笑むと、ケンジさんはハァと一息つき「ただいま」と照れ臭そうに笑った。
そして、
「アカリ。誕生日、おめでとう。」
突然の言葉に今度は私が驚いてしまった。
ケンジさん、覚えててくれたんだ。
なにも言わない私を見て、フッと表情がゆるみケンジさんは優しく次の言葉をそっとなげかける。
「忘れたことねぇだろ?」
「…はい。一度も。」
毎年必ずお祝いの言葉をくれる。
なかった年は一度もない。
「ありがとう…ございます。」
オープンした日でもあるから…覚えやすいのかも知れないけど、それでも誕生日を祝ってくれる人がいるのはやっぱり嬉しいものだ。
「あの、……それで……?」
彼女さんとはどうなったのだろう。
「あぁ。朝、約束したろ?
今まで心配かけて悪かったな!」
いつもの豪快な笑顔をみせ、もう大丈夫だと言った。
人の別れを喜ぶなんておかしいけど、ケンジさんの顔を見ていると良かったと思える。
「それでよ、アカリ。お前、俺……」
ケンジさんが何かを言いかけた時、言葉を遮るように私のケータイが鳴った。
「あっ、すいません!それで…」
音を止めて、続きを聞こうとケンジさんに向き直る。
「…いや、…電話出ないのか?」
「電話じゃなかったから大丈夫です。」
「友達とかじゃねぇの?誕生日だし。」
新着のメッセージ一件の表紙をケンジさんへ向けた。
メッセージの確認は正直後でもいい。今優先したいのはケンジさんの話しだ。
だけど、こう言われれば見るしかなくて。
とりあえず、ケンジさんの言い掛けた言葉を気にしつつ、すいませんとメッセージを開いた。
そこには、
【山崎 圭輔
Happy birthday!アカリ!】
ケイスケだ。
まさか、ケイスケも覚えててくれたんだ。
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