後悔
[あの日のこと](1/9)
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ケンジさんと出会ってからあと数ヶ月で2年になりそうなある日。

ケンジさんがそのうち自分で店を出すと言っていたのは知っていたけど、それが現実になるようだ。
ケンジさんは、準備が整ったらこの店を辞めちゃうんだ。
このサロンには大損失だろう。

ケンジさんが辞めたら、私はここに居ていいんだろうか。
なんて、失業するかもしれないのに、特に危機迫る感もなくぼんやり考えていた。

ケンジさんが、近づいて来て私を呼んだ。


「おい、アカリ。
お前、俺の店で働くんだぞ。」

「へ?」


他人事のように考えていた私に突然ケンジさんはそう告げた。


「何故に?」

「当たり前だろ!お前を連れてきたのは俺だろ。
だからだ。」

「いや、でも、そんな。いきなりすぎですよ。」

「心配すんな!大丈夫だ!」


そして、ガハハハと笑う。
なんでか、この人は親分肌だか兄貴肌っていうか、不思議と不安はない。
まぁ、拒否する理由もない。
ただ、勝手だなぁーって。それだけだ。


「本当、ケンジさんは
わかりました。よろしくお願いします!」

「おう!もう土地は決めてあるからな。
あとは建つのを待って、それまで手続きの日々だな!」

「はぁ?!建てる?!」

「まあ、何気に準備も進めてたし、次の冬までにはオープンだ!」

「冬までにって。」


季節はようやく暖かくなり始めたばかりなのに。
何を言ってるんだろう、この人は。


「俺の弟の仕事の関係でいい具合に話が進んでよ!
しかも、ここだけの話「まけて」くれた!ラッキ〜。」

ラッキ〜……

にしても、この人そんなに貯金とかあったんだろうか
この歳で銀行のローン組めるの?
まぁ、余計なお世話だけど。

そういえば、弟さんはまだ駆け出しだけどインテリアデザイナーだっけ。

なんだか、コソコソしてたのはこの話のためか。


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