後悔
[ケンジさんの事情](1/15)
サロンに向かって歩き始めると、
「相変わらずイケメン〜!みたいな?」
「えっ!?」
「ジッと顔見られると照れちゃう!ギャハハ!」
「ちがっ!全っ然違うし!!
なんか大人なんだなって思っただけだし!!!」
「ふ〜ん?まぁ、7年も経てば多少はねぇ。」
慌てる私をからかうように笑みを浮かべるケイスケ。
横顔をつい眺めてしまっていたのを気付かれていたようだ。
みんなと一緒の時とは違う。
今日のケイスケはちょっと意地悪かもしれない。
少し意地悪するところは昔のままだ。
そんなケイスケに少しだけ動揺しながら歩いた。
もうすぐお店に着くが、ケイスケはこのままお店で待つようだ。
コンビニに差し掛かり、この角を曲がる。
このコンビニの裏手にお店があり、曲がると先ずお店の駐車場が目にはいる。
お店の駐車場は店の前の道路を挟んで向かいにあり、ケンジさんの黒いジープがとまっているのが見えた。
「あっ、もうケンジさん来てる。」
「ん?あの人は?」
立ち止まり、良く見ると車の陰にはケンジさんと彼女さんがいた。
「あ〜、彼女さんだ。
どうしたんだろう?開店前に来るなんて珍し〜。」
歩き出そうとした私の腕をケイスケが掴み、コンビニの陰に引っ張られた。
「え?!なに?!」
びっくりして少し大きな声をだした私に、ケイスケは人差し指を立てて言った。
「しっ!!見てみ。様子変じゃないか?
なんか、泣いてない?彼女さん。」
「泣いて?!うそっ!?」
コソコソ声でそう会話しながら、陰からそっと様子を盗み見ると、
「…本当だ。確かに泣いてるように見える…。」
ケンジさんの腕を掴み、泣きながら必死に何か言ってる。
何となく声は聴こえるような気はするけど、内容まではわからない。
ただならぬ雰囲気に近寄りがたい。
「今行くのは…」
「マズイな。」
どうしようか考えながら、再び二人の様子を伺っていたその時だ。
手を大きく振りかぶる彼女さんにハッとした瞬間、バチンと音がした。
時間を気にしているのか、チラッと腕時計をケンジさんが見た瞬間だった。
彼女がケンジさんへみるからに強烈なビンタをした。
ここまで音が聞こえるほどとは、尋常じゃない。
とっさに陰に隠れ、目がテンになる私達。
「…み、見た?」
「ビンタ…したよな…?なかなか強烈なやつ…。」
またそっと覗くと、彼女がこっちへ走ってくる。
盗み見ていた後ろめたさに急いでコンビニの陰に隠れようと後ろへ下がた時、角から彼女が飛び出してきた。
「うわっ!」
「あっ!」
「ッ!!」
私はケンジさんの彼女とぶつかってしまった。
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