短編集『ほどけた靴紐を結んで』
[『サンタがイヴにやってくる』](1/8)
『サンタがイヴにやってくる』


朋美は今年幼稚園の年長組。

どこにでも居る、普通の女の子だ。


彼女は冬になると心のウキウキが止まらなかった。

クリスマスイヴの夜に眠っていると、パパが枕元にそぉっとプレゼントを置いていってくれた。

今年は目の大きなフランス人形だった。

もちろん朋美は、パパが置いたものであるとは知るよしもない。

朝、起きた彼女は狂喜乱舞した。


朝、ママがキッチンでお弁当を作っていると、ドタドタと廊下を走ってきて大きな声で言った。

「ママぁっ!こりぇ!こりぇ!」

人形をぎゅっと抱き締め、ママの側に着く。

「なんなの?大きな声で……友和(弟)起きちゃうじゃない」

「ママ!こりぇ!」

朋美は両手を伸ばし、人形を見せた。

「まぁ!それどうしたの?」

「サンタさんらよ。ともちん寝ていりゅあいだにプレジェンタらよ!」

「そうなのね。じゃあだいじにしなさいね」

「うん!ともちんいっちょうにょおともだち!」

「トイレ行ってきなさい。それから歯を磨いて顔も洗うのよ。タオルは新しいのが出てるから」

「うん!」

「あっちょっと!人形は置いて行きなさい。濡れちゃうでしょ」

「うー、わかった!」

朋美はそう言い、人形を食卓の上に置き、トイレに向かった。





- 53 -

前n[*][#]次n
/153 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]