短編集『ほどけた靴紐を結んで』
[『サンタがイヴにやってくる』](1/8)
『サンタがイヴにやってくる』
朋美は今年幼稚園の年長組。
どこにでも居る、普通の女の子だ。
彼女は冬になると心のウキウキが止まらなかった。
クリスマスイヴの夜に眠っていると、パパが枕元にそぉっとプレゼントを置いていってくれた。
今年は目の大きなフランス人形だった。
もちろん朋美は、パパが置いたものであるとは知るよしもない。
朝、起きた彼女は狂喜乱舞した。
朝、ママがキッチンでお弁当を作っていると、ドタドタと廊下を走ってきて大きな声で言った。
「ママぁっ!こりぇ!こりぇ!」
人形をぎゅっと抱き締め、ママの側に着く。
「なんなの?大きな声で……友和(弟)起きちゃうじゃない」
「ママ!こりぇ!」
朋美は両手を伸ばし、人形を見せた。
「まぁ!それどうしたの?」
「サンタさんらよ。ともちん寝ていりゅあいだにプレジェンタらよ!」
「そうなのね。じゃあだいじにしなさいね」
「うん!ともちんいっちょうにょおともだち!」
「トイレ行ってきなさい。それから歯を磨いて顔も洗うのよ。タオルは新しいのが出てるから」
「うん!」
「あっちょっと!人形は置いて行きなさい。濡れちゃうでしょ」
「うー、わかった!」
朋美はそう言い、人形を食卓の上に置き、トイレに向かった。
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