ザ・ダークマター
[第3章『追跡』](1/4)
 オリヴァー宅のリビング。

 ソファにはセイレーンが縛られたまま眠っている。

 美しい金髪がウェイブを持って伸びている。

 口には猿ぐつわがかまされている。

 
 ブラインドは開け放たれたままで朝日が眩しく入ってきている。

 ソファから少し離れた場所にオリヴァー、シュウ、サンが居た。

 オリヴァーとシュウは立ったまま、サンは円椅子に座っていた。

 オリヴァーが口を開く。

 「スナッチのレコードのとおりだ。もう一度見るか?」

 「いや、結構です」

 答えたのはサン博士だ。

 「それで大佐はセイレーンに暗黒物質が憑依したというんですか?」

 と、シュウ。

 「可能性がある、というだけだ。まだ断定の域にまで到っていない」

 素早くオリヴァーは答えた。

 「どのような対処をされましたか?」

 サンは慎重に聞く。

 「グラハム総統に包み隠さず話した。同時に科学庁にもな。
 あと15分ほどで科学庁の重要案件調査班が来る。
 他に質問は?」

 「大佐のその説が当たっていた場合、最大級の危機じゃないですか。
 我々は避難しなくていいのでしょうか?」

 更にサンが聞く。

 「それは心配ない。博士が言う危機があるのならば、セイレーンはとっくの昔に俺を殺している。
 しかし俺はこうして生きている。
 彼女の意識がかろうじて残っていた証拠だ。
 他に質問はあるか?」

 「もう一度聞きますが、ダーク物質は意識を持っていると?」

 とシュウ。

 「可能性はある」

 「その意識体は今どこに居ると思われますか?」

 サンが新しい質問をぶつける。

 「それは不明だ。
今でもセイレーンの身体に残っているかもしれないし、どこかに逃げ去ったかもしれない。
 他に質問は?」

 「やはり避難したほうがよいのでは?」

 と博士。

 「我々はチームだ。1人残して逃げられるか」

 大佐は噛み締めるように言い放った。

 「それもそうですね。いや失礼しました」

 「シュウ、お前の方からは質問はないか?」

 「意識を持ったダーク物質か。博士、こんな事例、前には有ったか?」

 シュウが太い声を出した。

 「記憶にはない。おそらくは記録にもないだろうな」

 サン博士はシュウを見て答えた。

 「来客アリ。科学庁ノ調査員ガ5人、太陽系連邦警察庁ノ特別小隊15人デス。入口どあヲ開ケマスカ?」

 スナッチが甲高い声を上げた。

 「待て」大佐は一言発してインターフォンに向かった。

 「こちらホークショウ大佐だ。予定より少し早いな。出動、感謝する。
 
 電話で確認したとおり、調査員3人と特別隊員4人だけ入ってくれ。
 残りの調査員と特別隊員はそれぞれのポイントに待機してくれ。
 入る7人は入口気密室で完全に外気を1度遮断して入ってきてくれ。
 質問はあるか?」

 「科学庁の特別ヘリはあとどれくらいで来着するか?」

 調査員の班長の声が聞こえた。

 「あと10分ぐらいだ。屋上ヘリポートに着く」

 「了解!これより突入する!オーバー!」

 オリヴァーはマイクのスイッチをオフにした。



- 24 -

前n[*][#]次n
/98 n

⇒しおり挿入


⇒作品レビュー
⇒モバスペBook

[編集]

[←戻る]