名前で呼ばないで。

U[話せない、離せない](1/4)

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もうすぐで2年生が終わる。


4月で晴れて3年生になる。



信じられない。


絢に出会ってから2年が経ったのだ。

そして、この気持ちに気付いてから、半年が過ぎ去ったのだ。


「……」


隣には絢がいる。

今日は土曜日の部活で、
絢はトランペットを手に、真面目に楽譜に向き合っている。


今日の絢は少し元気がない。


はっきりとそれが分かるのだが、口下手なわたしは、彼女に気の利いた言葉をかけてあげることができない。


そう、…できないのだ。


部活の時だけは、絢を独り占めできる状況にあるのに、
最近はパート練習で2人きりの時でさえ彼女と上手に話せない。

妙に意識してしまって、軽口がたたけないのだ。


少なくともわたしは、1年前のわたしに比べて毒舌ではなくなった。


あの頃の、学校に行くことも部活に行くことも無駄で馬鹿らしいことのように思っていたわたしはどこにもいない。


今は絢に会える部活が、最高に至福な時間だし、
毎日、胸の内は少しの切なさと甘い感情に満たされている。


だからこそ、わたしは怖い。


わたしと絢は同性同士だから、お互いをずっと縛り付けておくなんてこと不可能だ。


わたしは常に、すぐにでも絢に嫌われてしまうリスクを背負っている。


友情という名の細い糸しか、2人をつなぎ合わせてくれるものはない。


しかも、その糸は2人だけに留まらず、それぞれが色々な方面に糸を紡いで、知らず知らずのうちに増幅させてしまっている。

一方的に断ち切ってしまうこともできる。


なんて脆い。


なんて脆い絆だ。


「…」



わたしはトロンボーンを吹くことしかできない。




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