Rise/初恋を実らす
†1†[夢の次は現実。](1/3)
『───桂!桂ってば!』
左右に揺れる身体。
霧が掛かった様な頭に響く優しい声。
肌寒く感じる風が気持ち良くて
まどろむ意識をもう一度元の世界に戻そうとする。
けど…。
『いい加減起きなよ!』
パシンッ。
背中に広がる衝撃と痺れた様な痛み。
それは夢心地から現実に引き戻すには効果的。
こんな事する人、この学校で一人しか居ない。
やった犯人が分かると段々と頭がクリアに成っていった。
「どうしたの、沙衣」
「どうしたのじゃないよ。HR終わったから帰るよ」
怒ってる様な呆れてる様な……
どっちともに聞こえるその声に誘われてゆっくりと目を開けると………
─誰も居ない静かな教室が橙色に染まり、夕日に照らされていた。
それは余りにも幻想的で……
「───綺麗」
「やっと起きてくれた?」
素直に思ったことが声に出ていたようで起きた事に気付いた沙衣がスッと私の視界に入ってきた。
「もう6時過ぎちゃったから早く帰ろう?」
ニコッと笑った沙衣。
そんな彼女の言葉に黒板の上に設置された時計を見上げると6時15分と針が差していた。
……ι。
「……ゴメン。寝過ぎた」
「良いよ。桂が気持ち良さそうに眠ってるもんだから私も中々起こせなかったんだし」
そうは言ってもHRからって言ったら1時間近く待たせた事に成る。
けど沙衣は嫌な顔せず、ただ開けっ放しにされた教壇近くの窓を閉めた。
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