ピエロ・ゲーム
2†[赤いピエロ](1/15)




「こりゃ酷いな……」



現場を一目見た梅田は、目頭を摘んで軽く天を仰いだ。


血溜まりに横たわる2つの遺体。


全身をメッタ刺しにされたそれらは、かろうじて性別の判断がつくほどの惨殺だった。


すでに捜査官が現場検証を行っており、カメラのシャッター音がリビングに響いていた。



「……ガイシャは、この家に住む細貝克彦と多恵子の夫妻で間違いないんだな?」


「はっ、間違いありません!」


梅田の低い問いかけに、まだ二十代と思しき捜査官はやや緊張気味にそう答えた。


殺人現場特有の血生臭さと不穏な空気に、刑事になった当初は吐きそうになったこともある。


それから十七年経った今、梅田は我ながら殺人課の刑事として神経が太くなったことを感じていた。


もちろん、被害者を悼む気持ちや犯人への憎悪は変わらない。



「……梅田さん、すいません」


青いハンカチを口に当てた新堂がふらりと戻ってきて、梅田の隣りに立った。


凄惨な光景を目の当たりにして嘔吐感を訴えた部下に、梅田は顔を洗って出直して来いとどやしつけたのである。


若い頃の自分も、よく先輩刑事に叱咤されたことを思い出す。



「おう、カズ。……って、まだ顔色悪いぞお前。外で休んでろ」


「いえ、大丈夫です。俺も殺人課に配属されて二年目なんで、そろそろ慣れないと……」


そう言ってふーっと息を吐いた新堂は、コートのポケットから革の手帳を取り出した。




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