ピエロ・ゲーム
1†[偽りのお嬢様](1/16)




朝、目覚めるたびに憂鬱な気分になる。


今日もまた、昨日と同じような一日が始まる……。


美百合は軽く伸びをして、カーテンと窓を開けた。


外はすっきりとした快晴なのに、彼女の心は霧がかかっているようだった。



「おはよう」


階下に降りて、リビングにいる両親に声をかける。


新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる父親が顔も上げずに「おはよう」と返してきた。



「美百合。今日帰りが遅くなるから、これで何か買って食べなさい」


身支度を整えた母親が近づいてきて、テーブルの上に一万円札を置いた。


それを見た父親が嫌な顔をする。



「おい、高校生にそんな大金渡すな。夕飯なら、お前が作り置きしておけばいいだろう?」


「あら……。どこかの愛人さんにせっせと注ぎ込むような人に、金銭の口出しをされたくないわね」


母親が嫌味っぽく言い返すと、険悪な空気が漂い始めた。



──まただ。もう、いい加減にして。



ウンザリした気分で、美百合はトーストにかじりついた。


些細なことで、夫婦喧嘩に発展する。


美百合の兄が死んだ日から、家族の心はバラバラになってしまった。


この屋敷のような広い家で、形だけの家族を演じている細貝家。


再び、家族が心から笑い合える日は来るのだろうか──。




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