小さな依頼人(2/15)
この家は何気に広い。
遼太郎は時間短縮のため、庭を横切った。
中央あたりには立派な木が天に枝を伸ばしている。
ちらちらと足元には淡く色づいた花が咲いている。
後で水をやろうと遼太郎は内心思いつつ、足を速めた。
廊下を少し歩いて、すぐに目的地にたどり着いた。
そこは部屋で、障子の前には縁側がある。
うららかな春に昼寝をすれば、さぞ気持ちよいだろう。
障子を音もなく開けると、そこには一つ布団がしかれている。
そのまどろみの中で眠っている人物が一人。
遼太郎はため息をついて太陽を見る。
もう十分昇り切っている。
放っておきたいのだが、放っておけば黄昏時まで寝ているに一票。
生活のリズムを崩されると、こちらが困るので仕方がない。
遼太郎は遠慮もくそもなく部屋に入ると、ガバッと掛け布団を掴んだ。
そして力任せにそれを引っ張ると、一人の女性が現れる。
朝の外気にさらされ、寒いのか寝ていた人物は布団の真ん中で縮こまる。
だが彼女、しぶとい――いやいやマイペースであるため、まぁいいかと寝てしまうのである。
遼太郎は、呆れ半分感心半分で次の行動を起こした。
後ろを振り返り、口に手を当てて一言。
「あー、あんなところに悪名名高い質屋の旦那がー」
棒読みもいいところの嘘バレバレの台詞。
普通の、ごくごく普通の人間なら騙されないであろう作戦であったが、彼女はカッと目を見開いた。
「どこ、一体どこにいるって? 今すぐ尾行しにいくわよ、遼太郎!」
もし一部始終を見ていない人なら、数秒前に眠っていたとはわからないほどの早業だった。
ガバッと体を起こすと、遼太郎と目が合った。
「おはよう夕珱、飯の時間だ」
遼太郎は平然と彼女にそう言った。
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