小さな依頼人(1/15)
トントントンと規則正しい音が、調理場に響く。
白い湯気が天井に昇り、ぱちぱちと薪が爆ぜる。
深緑の着流しにたすきがけをしている青年――遼太郎は、包丁を置いて切った菜を沸いた鍋に放り込んだ。
明るい茶色の髪を首の後ろあたりで括っている、二十代前半ほどの青年。
新緑に似た緑の瞳は、目元が垂れている。
それゆえ、精悍な顔立ちだが鋭さと甘さが交ざり合っている。
長身というほどではないが、それなりにほどよく筋肉のついた体をしている。
機敏に調理場を行き来し、眠そうな素振りはまったくない。
動きに合わせて、動物の尻尾のような結われた髪がゆらゆらと動く。
窓の外から鶏の鳴き声が聞こえる。
普通の人間なら、もう活動を始める時間だろう。
「これで起きないんだからな……」
ぼそりと呆れ混じりに呟き、味噌を適当に鍋に入れてとく。
皿に一口入れて味見すると、ちょうど良かった。ご飯もそろそろ炊き上がるところだ。
ちょうどいいか、と遼太郎は頷き、たすきを解いた。
「さて、これからが問題だ……」
子供よりも手間のかかる人間を起こしにいかなければならない。
遼太郎は嫌そうな顔をしたが、仕方がないとため息をついて調理場を出た。
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