当束 (1/1) 僕と君の…… 窓を開け、君は言った。 「あの鳥のように あの青い大空を 自由に飛べたら どれだけ良いだろう。」 って。 君の頬が美しい。 桃色に染まって、精悍な横顔の君が、僕は好きだった。 “檻に閉じ込められた小鳥は、 空を見て、『懐かしい。』と嘆いている。” 儚い君の瞳は、いつになく 潤っていた。 「僕には、君を飛ばしてあげる事はできないけれど、自由にしてあげる事はできるよ。」 なんて僕は言ったけれど、 まだできていない。 アダムとイブは禁忌を犯した。 だから楽園を追放されたというのに……。 僕等は産まれたときから、 楽園なんかじゃなかった。 だけど、僕等は神からの贈り物なんだって、信じて生きてきた。 けれど、違ったみたいだ。 君との約束は守れそうにない。 僕等の最後が迫る足音が聞こえてきた。 「ごめんね。」 これしか、言えない。 きっと君は赦してくれない。 僕を責めるだろう。 でも、これさえも言えない。 何故なら、君は僕の前にはもう居ないから。 思い出は今も僕を苦しめる。 罪を犯した罰はまだ続いている。 back * | # next |