・[1章――虚無―――](1/40)
友人「悪いな、今日付き合わせて」
今、僕と友人は葬式を終え自宅に向かっている。
雨はもう止んでいた。
僕「大丈夫。恭平1人じゃ色々と大変だったろうし」
僕は微笑む。
友人、恭平は黙って俯き小さく「悪い」と呟いた。
角 恭平 スミ キョウヘイ
この男の両親を先日、僕は殺した。
恭平「…あのさ、隼人」
少し遠慮がちに間をあけて俯いたまま僕をチラリと見る恭平の目を
僕「どうした?恭平」
僕はしっかりと捕える。
濁りのない、純粋な目だ。
恭平「今日、今から俺んち来ないか?」
僕「今から?僕は大丈夫だけど」
僕の言葉に、ずっと堅苦しかった恭平の表情と口元が緩む。
恭平「その、、今は家に1人でいたくなくて、さ」
苦笑しながら僕にそういう恭平は
葬式が始まる前も後も一切涙を流していない。
恭平とは幼なじみであり親友である僕は、
奴が人前で涙を流さないことを知っていた。
でも今は思い切り泣いてもらわないと僕が困る。
僕「なんなら泊まろうか?どうせ家に帰っても1人だし」
僕にも両親がいない。
そして恭平も、つい先日から僕と同じ状態になった。
恭平には兄弟もいない。
これでもう本当に恭平は1人だと思っていた。
恭平「……本当…か?」
恭平は僕を見る。
期待した目。
僕は頷く。
恭平「色々ごめん。ありがとう、隼人」
僕「何も遠慮することないよ。僕ら親友なんだから」
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