酔っぱらいと朝焼け




 
夕方、太陽が沈んだ後の薄く青い空が好きだと彼は言った。私は同じ色だけど朝の太陽が上る前の薄く青い空の方が好きだと言った。それは好きじゃないと貴方は言ったんだっけ。

私の好きだと言った、朝日が顔を出す少し前。外は薄く明るい。飲んで飲んで、ほろよいの頭で澄んだ空気を大きく吸い込む。同期と飲み明かした朝。始発で家に帰る途中。飲み倒して気持ち悪いし、トイレにいきたいし、お腹すいたしラーメンでも食べたい。そんな朝。最悪な朝を迎えたのにどこか嫌いになれない。徐々に空が明るくなる。町には私と同じような状況のスーツを来た人がちらほらいる。

「トイレにいきてぇ」
ひとりで帰ってるようだったけど、実はもう一人。この朝の空の色はあまり好きじゃないと言った彼が隣にいたりする。
「コンビニ寄るか」
「おん」
私より酔ってる彼は足取りが少し覚束ない。意識はあるっぽいけど。恋人ではない。お互いそんな気持ちはないだろう。男友達みたいな。彼も私をそう思ってるだろう。

コンビニについて彼はトイレ、私はジャンプを立ち読み。彼はトイレから出てくると行くぞなんて行ってそそくさとコンビニを出ていく。私も漫画をおいて後ろを追う。隣を歩くけど二人はあまり話さない。彼は少し酔いが覚めたのかまっすぐ歩けるようになってる。
「お前、この空好きなんだろ」
急に話し出したかと思えば、そんなことを聞いてくる。
「好きだよ。朝日昇ってああ帰ったら寝るだけだーって思うこの気だるさの中で感じるこの空気とか。」
いつの間にか朝日が登ってて空はさっきより明るくなってた。
「あんたは好きじゃないんでしょ?」
「ああ」
彼を見れば気の抜けた顔で彼は私を見た。

電車に乗る。二人で並んで座って、普段は心地よい電車の揺れも酔った私たちには吐き気を増すものにしか感じなかった。電車に乗り3駅。私はそこで降りて彼はそこよりまた3駅向こうで降りる。アナウンスが流れて私が降りる駅につく。

 



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