好きになってごめん
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駐車場込みで家賃八万五千円。
全面フローリング、和室無し。
2LDKのマンションの一室が、俺とあいつの住む家。

一緒に住む様になってどれくらい経ったのか。
長く居れば居る程、俺の中にある汚い感情が醜く肥え太っていく。
悟られない様必死に隠して奥底に閉じ込めても、肥大するソレは容赦無く這い上がろうとする。

苦しいから出してくれと叫び、解放してくれと懇願する自分の気持ちを見て見ぬフリ。
いい加減疲れた。
もう隠し通すのさえ限界に近い。
押さえ込むのに、疲弊する。
それでも離れたくないから、俺は今日もここに帰ってくる。

「ただいま」
「おかえり大和。仕事お疲れさん」

風呂沸いてるよ、と笑うソイツにぎこちなく笑い返し、じゃあ入ってくると早々にリビングを出た。
ソファーに座りテレビを見る、友達。
その姿を横目に扉を閉める。
廊下に立ち、何度も深呼吸を繰り返した。
心臓が五月蝿い。
いっそ止まってくれと願うくらい、激しく脈打つそこを力任せに胸の上から殴る。


好きになってごめん。
俺もお前も男なのに。
更に言うなら俺は生きてる価値すら無い、最低で糞なクズ人間なのに。
好きになってごめんな。


一緒に居ても好きがデカくなるばかりで苦しいだけ。
それでもこの感情の成長を止められない。
どうしようもない。
不毛だ。

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