精神病棟
[四日目](1/11)



―――――い、おい、目を覚ませ




「…………?」


ふと誰かに呼ばれたような気がして眠っていた意識が浮上する。

薄く開いた瞼を何度か瞬きさせると誰かが俺の眠るベッドの横に立ち俺を見下ろしていた。

誰だ?暗くて顔が分からない。

けれど聞き覚えのある声だった。



――――忘れたのか、思い出せ



「(………何を)」



――――しっかりしろ、呑まれるな



「(呑まれる?何に)」


カーテンの隙間から差し込む月明かりに、立っている相手の腰から下が照らされる。

俺と同じ制服を着ていた。

ああ何だ、先輩か。

俺は寝惚けながら「お疲れ様です、先輩」と声をかけた。

先輩は拳を握って震えている。


どうしたのだろう。


何かあったのだろうか。

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