妖精は月と舞う
狙われた二人 (1/22)
あれからすぐに馬車を捕まえ、日が落ちる前にハウゼンに到着したシリカとケルシー。
シリカはまずイーノから目撃情報を得た海辺へと足を向けた。シーナがまだこの街にいるという可能性はゼロではない。だが近隣の宿泊施設や住人たちに聞き込みをしたが、シーナの存在を確認した者はいなかった。
どうやらケルピーの騒動があり、皆海に近づくことを避けていたようだ。
おそらくシーナたちはハウゼンには長居せずに次に向かったのだろう。唯一、港近くの酒場では似たような特徴の少女が来たという情報を得たが、それも次の足取りに繋がるような情報ではなかった。
聞き込みによってシーナがまだハウゼンに残っている可能性は限りなく低くなった。それでも完全にゼロというわけではないが、時間がない今はとにかく可能性の高いほうに賭けるべきだった。
そう結論づけて向かったハウゼンの駅では、予想通り駅員が金髪の少女と赤い髪と瞳の男を見掛けていた。その少女はなぜか眠ったまま男に抱えられていたため、瞳の色までは分からないという。
アーシーはやはり人間に紛れているようだ。
中位妖精でも人型になれる妖精はいるが、上位妖精ともなると気配も人間を真似ることができるため非常に見分けがつきにくい。
ハウゼンから出ている汽車は大きく北に向かうものと南に向かうものとで分かれている。この選択を誤れば彼女からは大きく遠ざかることになる。
駅員にどのホームに降りたかを聞いたがさすがにそこまでは分からないと首を振られた。
北か南か。見事ハウゼンを言い当てたケルシーもさすがに頭を抱えていた。
シリカは必死に思考を巡らせる。
ハウゼンに長居しなかったのは酒場の件からも、働き口が見つからなかったことが理由であると考えられる。逃亡資金を稼ごうとしていると考えるのが妥当だ。
となると今働き口が多いのは、商家の多く栄える北の地区。
- 62 -
← →
bookmark
⇒作品レビュー
⇒モバスペBook
[編集]
←