自称探偵と自称迷子の魔王
[間章 とある世界での出来事](1/2)
 ──出入り口が一つしかない円形の部屋。その部屋で二人の女性と一人の傷ついた少年が対峙していた。少年の傷は深く、出血も夥(おびただ)しい。しかし、不思議な事に少年の視線と足元はしっかりしており、何の支えもない状態で剣を構えて立っている。
 少年は二人いる女性のうちの一人、紅い髪の女性を見据えながら息を吐き、何かを決めたような眼になる。直後、少年が構える剣の刀身が輝いて強い光を放ち始めた。


 次が少年にとって最後の一撃になる。


 紅い髪の女性は少年の雰囲気からそう感じ取り、回避行動ではなく防御体勢をとることにした。
 最後の一撃であれば、相手も捨て身で来る。それだけに威力や範囲を予測するのは難しい。故に回避ではなく防御を選んだ。


 そのためには当然、身を守る物が必要になる。その守る物を、紅い髪の女性は自身の前面に紅い光として出し、それを薄い膜のようにして広げる。同時に、距離をとっていた少年は走り始めた。少年と女性の距離は徐々に縮まり、少年は剣を頭上に振り上げ、射程圏に入ったところでそれは振り下ろされ、女性の前面に展開されてる光とぶつかった。


 瞬間。部屋中が真っ白な光で染まり、何も見えなくなる。部屋にいた三人も、かろうじて互いの顔が見えるだけで他は何も見えない。音も聞こえず、何が起きてるのかすら分からない。そんな状況に対して、三人は呆然とした表情で固まるしかなかった。

 そして、その僅かに見えてた視界も数秒で失ってしまい、三人は完全に身動きが取れなくなる。

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