自称探偵と自称迷子の魔王
[序章 自称探偵の初仕事](1/19)

「待て──────っ!!」


 ──時は五月六日、日曜日。


 ゴールデンウィーク最後の日の午後。ビルやマンションなどが集まってできる裏路地に、その声は響き渡った。
 我ながら無意味な事をするなと思いながら精一杯声を張り上げて、必死になって前を走ってるモノを追いかける。

 途中、何度も転がってる空き缶やゴミが入ってるポリバケツを蹴飛ばして足を痛めたり、カラスがゴミ袋を漁って引っ張り出したであろう生ゴミを踏んで滑って転けそうになったりしながら、氷室結城(ひむろ ゆうき)は執拗にそれを追いかけていた。


「あ──っ! もう──っ! いい加減、捕まってくれてもいいじゃんかよーっ!」


 氷室はもう限界だと言わんばかりに悲鳴のような声を上げる。しかし、追いかけてる相手はこちらの言葉を解さず、尚且つ小さくて素早いため捕まえるのは至難の業と言えるだろう。
 そのため、この熾烈を極めた鬼ごっこはかれこれ十数分続いている。だがそこに丁度良い具合に通り抜け防止用の高いフェンスが逃走者の前に見えてきた。


 やがてフェンスに遮られて逃走経路を失った逃亡者は忌々しそうにフェンスを睨みつける。一方、ようやく相手を追い詰めた氷室は「ふっふっふ」と不気味な笑みを浮かべる。


「ようやく追い詰めたぞ〜。さあ、鬼ごっこは終わりだ!」


 氷室はそう言うと、逃がすまいと相手に覆い被さるように飛び込んだ。その結果、氷室は相手を捕まえることができた。


「やった──っ! やっと捕まえたよー!」


 捕まえた相手を顔の前に持ち上げて喜ぶ氷室。しかし、そんな氷室に悲劇が起こる。


「ニャアァァッ!」


 バリバリバリッ! そんな擬音が聞こえてきそうな勢いで氷室の顔を引っ掻かいたのは、今まさに氷室が捕まえた相手。白い猫だった。

- 1 -

前n[*]|[#]次n
/33 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]