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遭う者・妬む者](1/25)
和晃と日向が付き合ってるって知って、1週間が経った。
今日は和晃が仕事で居ない。
陽向さんが主演の映画の撮影だ。
やっと役者の1歩がスタートできるって言ってたな。
役者になりたがってたから、すげぇ嬉しそうだったし。
でも俺は、変わらない。
放課後、俺は実力テストの結果を見て何度目かの溜め息を吐いた。
帰る気になれない。
だから教室に1人、残っていた。
何回見ても、点数は変わらない。
何で……。
「あ、賢誠くんだ!」
無邪気な声が聞こえてきて、俺はそいつを見た。
「どうしたの、こんな所で1人。誰か待ってるの?」
「いや……」
そう言ったのに、戸田は教室に入って来て、俺の前の席に座った。
そして俺が今持っている物を見て、笑った。
「テスト、悪かったんでしょ?しかも結愛が教えた数学と英語に限って」
「……何で知ってんだ」
俺は戸田を睨んだ。
でも戸田は笑ったまま。
「そりゃあもちろん、結愛が私の目の前で先生に言われて、私の目の前で先生に頭を下げたんだもの」
「頭を下げた……?」
「うん、そうだよ。『篠さんの成績が上がらなかったのは私の責任です』って」
戸田の笑顔が、笑顔じゃないように見えた。
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