V[
変わらない者・変わる者](29/29)
「確かに俺は篠賢誠だ。で、モデル。
だから名前言ったんだしそっちも名前、教えろよ」
そう言うと、何かを言おうとした“ハル”を止めて、“ソウ”が言った。
「その必要はない。
君はヒナのことを全く知らないようだから。なおさら俺達を知る必要性がない」
ムカッと来て、俺は睨み付ける。
でも“ソウ”は俺の事何か全く相手にしてなかった。
「どういうことだよ」
「そのままの意味。君はヒナの事をどれだけ知っている?せいぜい名前くらいだろう。
生まれも本当の姿だって……」
「ソウ」
また、日向の低い声。
でもさっきとは違って怒っているようだった。
俺は視線を日向に移す。
下から見上げているのに、鳥肌が立つぐらい怖い目だった。
可愛さなんて、少しもない。
「余計なことを言わないで。
それ以上言ったなら、いくらソウでも怒るわよ」
「……ごめん」
ここで、俺ならいつも日向は笑ってくれるのに、日向は怖い目のまま変わらなかった。
「日向……」
でも俺がそう呼べば、日向はにっこり笑う。
……なあ日向。
電車が止まって、降りる人も居れば乗る人も居て。
「ムカつく」
ざわざわしている電車の中でそんな声が聞こえた。
変わらない者・変わる者 fin
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