アリス Alice's Adventure
†[少女アリスと赤い猫](1/17)
森の中を走る


一つの恐怖に支配されていた



首を切られる!?

冗談じゃない



キャタピラーと別れて、一人になってから、ずっとそのことが頭から離れなかった

空腹で、疲れ果てていたが、足は止まらない

不安で仕方がない


自分の首が飛んでいるところを思わず想像してしまう

考えただけで、痛い


枝が引っ掛かって、腕に痛みが走る


息が切れる

胸が苦しい


でも止まれない



と、そこへ、声がかかった


「どうしたんだい?
騒がしなあ
そんなに慌ててさ」

知らず知らず、足が止まる


周りを警戒したが、木ばかり

…空耳?


「上だよ」

声のままに見上げると、木の上に誰かがいて、こっちを見下ろしている

最近、見下ろされてばかりのような…

銀髪しかり、キャタピラーしかり、この人しかり…


「…見ない顔だね
さしずめゲームの参加者かな
随分奥まで来たんだね」


暗くて顔は見えないが、そいつは木の枝のうえに体を伸ばしていた

「て、んん?
君派手な顔してるねって…ありゃあ、血だ…」

と言いながら、そいつは木から降りて近寄っていきた

「え…」



言われて初めて頬が痛いのに気が付いた

いつのまにか、木の枝やらで切っていたようだ

顔を触ると、ヌルっとしたものが、手についた

目の前に掲げると、闇の中黒っぽいそれからは鉄の匂い…



血だ


「…」

「あーあいっぱい傷つけて…
顔が真っ赤っかだよ
…て、おい!!」

目の前に立ったそいつも、森も、いっしょくたになって歪む



その先は真っ暗闇になったから、覚えていない



ただ、懐かしい声に呼ばれた気がした

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