六章[たどり着けない場所](1/1)
俺は渋谷の街角のスタジオに居た。
ミックスのギタリストをやれ宣言から約1週間。
俺は感覚を取り戻すべく慌てて練習をした。
セッションする曲は全てコピー。
初顔合わせならまぁそれが良いだろう。
自己紹介する間もなくミックスが言う
「サティスファクションいくぞ…」
俺は慌ててギターを掻き鳴らす。
ベースとドラムはヤレヤレって顔で合わせる。
ミックスはサティスファクションには合わない幽玄な歌い方をする
俺は思った…
俺以外の皆は俺よりもずっと先を歩いていてそして俺とは違う景色を眺めてるんだ。と…
ミックスは言う。
「落ち着け…お前ならすぐ慣れるから。」
励ましているつもりなんだろうが、プライドの高い俺にはショックでしかなかった…
そしてセッションが終わる頃には俺はボロボロになっていた。
そのあと自己紹介を兼ねてファミレスでミーティング。
まず、ドラムの人が「俺はマサシ、マーチャンって呼んで!」といきなり喋りだし、続いてベースが「俺、こいつの(マーチャン)弟でタケシ…」
このバンドのリズム隊は兄弟だった。
だからなんか以心伝心ができているような絶妙な音作りができるんだ!と思った。
そして俺
「えっと…キースって言います、本名ではないです。ギターをミックスに教えてもらって音楽をやろうと思いました。」
するとミックスはおどけてマーチャンとタケシに言う。
「こいつ、どうしょもない悪だからさ、俺なんて少年院で5回くらいぶっ飛ばされたんだぜ?笑 何もしてないのに…………なっ?キース?笑」
俺は
「ごめんなさい」しか言えなかった。
するとミックスは
「驚いたよ、お前反省すること覚えたんだな!これから楽しくなりそうじゃん!」
今ミックスは俺の味方だ。
それがわかった。
続けてミックスは
「う〜ん…技術面はボロボロだね、リズム感もない…ただ非凡な物は感じる…かなぁ?」
と、俺を分析しだした。
そしてミックスは一枚のMDを出してこう言う
「これ、俺らがやるオリジナルの曲だから…5曲入ってるから退院するころまでには覚えといてね!」
と、言ってミックスとリズム兄弟は
バイトへ行った。
最後に「また見舞い行くからさ!」
とだけ言って。
俺は色々考える時間が必要だった。
病院へ帰る道、電気屋に寄ってMDコンポにミックスからもらったMDを入れて聴いた。
鳥肌がたった。
ミックスの人間性が出ている、幽玄で所々に怒りがあるすごい曲だ。
俺にはとても真似できない。
少し落ち込んだ。そして病院に帰ると黒いコートを着たオッサンが三名。
見るからに警察…
俺は無断で外泊したため病院から失踪届けを出されたのだった。
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