【ここに来るのも久々だねぇ……君に会うのもだけど、さ】
長い黒髪を風に遊ばせながらにこりと女は微笑む。
【俺が何処にいようとあんたにゃ関係ないだろ?………でもまぁ、今日は会ってもしょうがないか】
岩の上に腰掛けている人影は肩をすくめた。
群青色の髪が風に揺れる。
月光を背後から浴び、その顔は見えないがどこか翳っているようにも見えた。
【墓石に座るなんて悪趣味ぃ】
【墓石って言っても形だけだろ?ここには何もない。あんたが持ってったから】
【望みを叶えてあげたんだよ】
そう言って、女──── 夜嗣の顔をしたそれは笑った。