それはもう明日でいいからと、無理やりパソコンを落とされて渋々帰り支度をする。
先に車を回していた佐久間はいつかのように送っていくからと強制的にわたしを助手席に放り込んだ。
佐久間の車に乗るのも運転する姿を見るのも2度目。
だけど、さっきの余韻というか、この前より緊張してしまっている。
なんだどうしたわたし。
相手は佐久間だ。誘ったのはお前だとか記憶にないとか、そんな事言うクズなのに、ちょっと優しい時があるからってドキドキしちゃダメよ。
勘違いするなと
そう言い聞かせれば言い聞かせるほど、うるさいくらいに胸が鳴る。ちらちらとその姿を盗み見ては、その真剣な表情やハンドルを握る長い指に目がいく。
これまで何でもなかったはずなのに、いちいちカッコよく見える。ああヤバい。これヤバい。絶対ヤバいでしょ。
もうほぼ確定してる。
でも認めたくないし、違うと思いたい。
「ねえ佐久間……その…この間はごめん」
このまま黙ってると頭がおかしくなりそうで、資料室での失言を今さらながら謝罪する。
勝手に決めつけて、失礼なことを言った。
佐久間という人間をわかろうともせずに自分のものさしで測ってその結果がアレなのだから、わたしの方がよっぽどクズじゃない。
「わたし、勝手に佐久間は産んでほしくないから気にかけてるんだと思い込んでた。周りにバレたくないから見張りに来てると思ってた。でも…」
佐久間はわたしが妊娠したって告げる前からわたしを気遣ってくれてたし、わざわざそんな監視みたいな事しないでズバッと誰にもいうなと言ってくればいいだけの話。
てか実際、あの日遠回しにそんな感じのこと言ってたもんね。
だから、
佐久間はただ優しい人で、妊娠しているわたしを気づかってるだけなの。今日だって、この前だってそう。
勝手に勘違いして、ほんと酷いこと言った。
「とにかく、本当にごめんなさい」
もう今さらだけど、やっぱりきちんとお詫びをしなきゃ。
だって佐久間はそんなクズのわたしをまだ気にかけてくれてる。おろせとか言わずにどうしたいのかと尋ねてくれる。わたしの意志を尊重しようとしてくれてる。
ちょっと無責任なようにも感じられるけど、
わたしが答えを出したとして、どうしてくれるわけでもないのかもしれないけれど。
それでもそれがきっと佐久間なりの誠意なんじゃないかなんて思ってしまうのは……
「……べつに、謝んなくていい。鈴原の思ってた通りだから」
「……へ?」
「俺………好きなヤツ、いるから。だから困るんだよ」
困る……?
それって、つまり……
「お腹の子ども、おろして」
───誠意だなんて思うのは……間違い、だった?