YELL
[あの日からはじまってた](1/34)
赤
「千晃は俺との結婚考えたことある?ないよね。だからつい、結婚しようよ〜なんて言われちゃってフラフラっとさ…」
自分が浮気してバレて、その言い訳を正当化したい彼氏、もとい、たったいま元カレになった、その人のくどい話を聞きながら、ビールを喉に流し込み大好きな味噌煮込みを頬張る。
せめてお腹を満たして帰ろう。
「ごちそうさまでした。大輝」
「え?うん、もういいの?」
「うん、満足。お腹いっぱい。ビールも美味しかった。別れ話はもちろんOKです。私のアドレス消してね」
と言いながらスマホの元カレのアドレスを開き、目の前で消して見せる。
「ついでにこっちも消しとくね」
大輝の浮気現場の写メも消す。
胸元が大きく開いた服を着て、大輝の腕に胸を押し付けて腕を絡めてる女の人との写メは、元カレの後輩から私宛に送られてきたものだった。
「大輝も消してね」
「いや、千晃が別れたくないって言えば別れない道もあるっていうか、俺は千晃と別れたくないなって…」
元カレの言葉を遮るように
「今までありがとう」
深くお辞儀をして席を立つ。
「ちょ、ちょっと待ってよ、千晃」
お会計をしてる隙に、店を出てタクシーを拾った。
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