浅葱色の空〜繰り返される時の中で〜
[文久3年](1/41)
文久3年正月
その日は、朝から藩邸に呼び出された桂達。
千夜は、留守番だと
そう思っていた。
身支度を整える桂達を尻目に、
千夜は、外の景色を眺めていた。
目に止まったのは、ボロボロのナリの男の人。
目の前には、ヒビの入った茶碗。
そこには銭が入れられていた。
「あの人、またあそこにいる。」
彼を見るのは、初めてではない。
何日か前から、同じ場所で見かける人物。
千夜は、その人が気になっていた。
今日、桂達が出かけたら、話し掛けてみようかな。
そう思った時、
「千夜!君も行くんだよ!
何、くつろいでるの!?」
「え?今、初めて聞いたんだけど?」
吉田は、高杉へと視線を向ける。
「高杉!!
ちゃんと千夜に言っといてって、あれ程言ったのに!」
「あー。忘れた。」
「………。」
2人の言い合いに、千夜は、呆れ
再び男性へと視線を戻した時、
ボロボロの着物を着た男性は、
既にいなくなっていたーーーー。
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