……イベント当日…新井場邸……
桃子は白いドレスを身に纏い。出掛ける準備をしていた。
桃子のドレス姿は綺麗で尚且つ、圧倒的な存在感を放っていた。
縁はそんな桃子につい見とれてしまった。
桃子は縁に言った。
「どうだ?縁……似合うか?」
桃子は縁にドレス姿を確認してもらうため、くるりと一回転した。
縁はそれを見て言った。
「あ、ああ……いいんじゃない……。サイン会にしては気合いが入ってんな……」
桃子は言った。
「当たり前だ……サイン会はファン一人一人に普段の礼を直接言える、数少ない機会だ……それなりの格好で挑まないと、相手に失礼だろ……」
縁は言った。
「へぇ……桃子さんでも、そんな事を考えるんだ……意外……」
桃子は両脇腹に手をついて言った。
「当然だっ!」
桃子の意外な一面を見たところで、縁が言った。
「さっ、行こうぜ……遅刻して、その大事なファンを待たすわけに、いかないだろ?」
縁と桃子はタクシーでイベントが行われる、百合根百貨店へ向かった。
……百合根百貨店…控室……
「控室まで用意してもらって……まるで芸能人だな……」
縁は控室を隅から隅まで見渡している。
桃子は言った。
「まぁ……私ほど美人で有名な作家だと当然だが……」
縁は呆れて言った。
「また自分で言ってる……でも、こう言うの見るとやっぱり桃子さんってすげぇのな……」
桃子は言った。
「半分はお前の物だ……」
「えっ?……」
その時控室のドアからノックが鳴った。
イベントスタッフが控室にやって来たのだ。
「小笠原先生……今日の打合せを……」
桃子はスタッフに言った。
「どうぞ……」
スタッフが控室に入ってくると、縁は立ち上がった。
桃子は言った。
「行くのか?別にここにいてもいいんだぞ……」
縁は言った。
「俺は席を外すよ……んじゃ、イベント頑張ってね……先生っ!」
そう言うと縁は控室からでて行った。
縁は呟いた。
「さてと……」