天才・新井場縁の災難
[前編A](1/5)

……午後…喫茶店風の声……


縁と桃子は大学をあとにし、昼食をしに喫茶店風の声に来ていた。

縁はナポリタンを食べながら、巧から借りたノートPCで何かを調べている。

隣にいる桃子はオムライスを食べながら、縁に言った。
「さっきから何をしている?」

「ネットで桃子さんに関する事を調べている……」

桃子は少し嬉しそうに言った。
「私ってそんなに有名なのか?」

「テレビに出た位だからなぁ……それにファンも多いみたいだから……」

桃子の表情は緩んでいた。
「それで何を調べている?」

縁は桃子の表情を見て言った。
「しまりがねぇぞ……。まぁ、桃子さんは有名で、ファンもそれなりにいるから……専用の掲示板があると思ってさ……」

桃子は感心した。
「そんな物があるのか……」

「うん……案の定あったよ……『小笠原桃子の板』ってサイトが……」

巧が興味津々で言った。
「どんなサイトだよ?」

縁は言った。
「至って普通の掲示板だよ……良い事も悪い事も書いてある……。まぁ、本人は見ない方がいいよ……」

桃子は言った。
「私の悪口が書いてあるのか?」

縁は言った。
「まぁ、有名人の宿命だよ……」

巧も言った。
「そうだな……有名人の誹謗中傷は、今の世の中じゃ、当たり前だよ……」

桃子は言った。
「そうなのか?」

縁は言った。
「確かに悪意しかない書き込みもあるけど……それは一部だよ。大半は作品に関する賛否や、桃子さんのルックスに対する評価だね……」

桃子は言った。
「あまりいい気分ではない……。で、縁はそれで何を調べてるんだ?」

縁は言った。
「その手紙を送った人物を探してる……」

桃子は驚いた様子で言った。
「わかるのかっ?」

「う〜ん……わかんないけど、手掛かりはあると思うよ……」

巧が言った。
「アクセスは全国だろ?数が多すぎるぞ……」

縁は言った。
「絞り混むさ……まずこの手紙、切手は付いてなかったんだよね?」

縁が手紙をヒラヒラさせると、桃子は言った。
「ああ……封筒にも入ってなく、そのままポストに入ってた」

「て、事は……この辺の人間って事だ。逸れに、この『モモタン』って言う、桃子さんの呼び方……特徴的だ」

縁は掲示板を見ながら言った。
「この掲示板の大半が『桃子様』『桃ちゃん』って呼び方だ……」

巧は縁に言った。
「確かに特徴的な呼び方だけど……そいつがこの掲示板にいるとは限らないぜ……」

縁は言った。
「いや、必ずいる……ストーカーするくらいのファンだ……そんなファンが応援サイトにいないはずが無いよ……自分しか発信できない情報で、他より優越感を得るために……」

桃子が言った。
「それで、『モモタン』を使っている者はいるのか?」

縁は頷いた。
「いるよ……100人程……」

桃子と巧は声を揃えた。
「ひゃ、100人っ!?」

縁は淡々と言った。
「当たり前だろ……何人のユーザーがいると思ってんだ?100人ぐらいいるよ……」

桃子が言った。
「まさか……それを一人づつ当たるのか?」

縁は呆れ気味に言った。
「んなわけねぇだろ……。そんな事やってたら、イベントの日に間に合わないよ……」

巧が言った。
「どうすんの?」

「有村さんに頼んで、発信源を調べてもらう……それで、この辺から発信された物を当たるわけ……」

桃子が言った。
「なるほど……」

「そう言う事だから……今『モモタン』を使っているハンドルネームのリストアップをしている。それをUSBに保存して、俺のPCから有村さんにメールする」

巧が言った。
「いいのか?警視さんに借作って……」

縁は言った。
「この間から借を作りっぱなしだけど……仕方ないよ……。こっから先、俺にはどうにも出来ない……時間もないからね」

桃子は頬を少し紅くし……感動した。
「縁……お前というやつは……そんなにも私の事を……」

縁は少し照れながら言った。
「な、何だよ……まぁ、なんだ……変態野郎を放っておくわけにもいかないからな……」

巧は少し縁を冷やかした。
「照れてるよ、こいつ……まだまだガキだな……」

縁は言った。
「うるせぇよっ!」



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