骨を噛む
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久々に会った楓くんはなんとなく、
少し痩せたように見えた。
「 ひさしぶりだね。楓くん、痩せた? 」
「 そうですか?
んー、最近忙しかったからかな 」
すみませんこっちから誘っといて日程の調節
かなり手間取ってしまって、と
目だけで会釈しながら
彼が私の空になったコップにビールを注ぐ。
「 、 ありがとう 」
「 ? どうかしました? 」
「 ううん、なんでもない 」
似ている。
楓くんは、樹に似ている。ほんとうに。
もちろん同じ血が流れている兄弟だから
似ているのは当たり前なのかもしれないが
それにしてもほんとうに、似ている。
170ちょっとしかない樹より
少し身長は高いけれど。
手の骨張った感じも、笑った時に
目がくしゃりと細くなるのも
咳払いをする時の声も。
樹と私より2つ下、次の春に大学を
卒業する楓くんは 春からもそのまま
こっちにいるらしい。
俺も楓と住もうかな、なんて
一時期 樹が冗談を言っていた。
彼はまだ少しでもそんなことを
考えているのだろうか。…なんて。
「 …最近、兄貴げんきですか? 」
「 ……え、あ、うん。元気だと思うけど。
特にいつもと変わりはないよ 」
「 そっか、ならいいです 」
「 喧嘩でもしたの? 」
「 や、忙しくてあんまり連絡
取れてなかったから 」
「 そう 」
樹も忙しいのかな、あんまり最近
連絡来ないけど。
なんて。
そんなこと、疑っているようで聞けなかった。
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