骨を噛む
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目が覚めていつも通り携帯を開いたけれど
樹からの連絡はなかった。



まだ夢うつつの頭を少し振って
顔を洗い、口をゆすぐ。

昨日は本を読んだり録画していたドラマを
観たりして遅い時間まで起きていたから
昼前すぎまで寝ていても
まだ意識はどこかぼんやりしていた。


洗面台に立ったその流れのまま
ポットに水を入れてお湯が沸くのを待つ。

お気に入りのマグにインスタントの
コーヒーの粉を入れてしまえば
お湯が沸くまでの数分間、
やることがなくて 冷たい地べたに
ぺたんと座り込んだ。


行儀悪いな今、と思いつつも
どうせ誰も見ていないのだし、と
そのまま体操座りでだらりと携帯を眺める。




連絡くらいしてくれてもいいのに。

樹のばーか、と 小声で呟く。



電話しようって約束してたのに。




大学2年の頃からの付き合いなのだ
彼が大体どういう人なのかは分かっている。

誠実で優しくて 集中して物事をこなすけれど
ひとつのことが済むと 途端にスイッチが
オフになってしまうタイプ。

樹が帰宅する駅からの途中、電話を繋いで
話しながら帰ることはよくあるが
バタン、と家のドアが開く音がしたかと思えば

数分後には電話の向こうから
寝息が聞こえてくることなんて日常茶飯事だ。



年の瀬も近付いて忙しくなる時期だから
仕方ないのかもしれない。

あまり追って連絡するのもどうかと思うし
余裕ができたら 返信は来るだろう。
聞いてなかったけれど今日は樹も
休みなのかもしれないし。



ぱちん、とポットのお湯が沸いた音がして
弾かれるように立ち上がる。


いつものこと。



そうおもって私はそれ以上
樹のことを考えるのをやめて

久々の休日を過ごすべく コーヒーを入れ
部屋に戻り、さっきまで包まっていた
ブランケットを自分のほうに引き寄せた。



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