Prologue(1/2)
「ようこそ、“元”牙龍のお姫様」
そう告げる目の前の男はあまりにも完璧で綺麗だった。
この世の物とは思えないほどに整った顔には、どことなくうっすらと影があって。
艶やかな藍色の髪は、窓から覗く夕日と混ざって不思議な色をしている。
歓迎なんて全くしてないくせに。
私を見下ろす瞳には何の感情も入っていない。
「余計なことさえしなければ、あんたと牙龍には手を出さない」
だから、大人しくしてなよ?
冷たい色を含んだ声に、私は小さく頷いた。
どうして、こんなことになったんだろ。
部屋を出ていく男の後姿を見ながら、ついたため息は無機質な部屋に溶けて消えた。
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