恋を教えて。2
[重なる想い](1/10)


文化祭の軽音部で、どうしてあんなことを言ったのか。

『伊織、もう一度オレのこと好きって言って…』

心から思っていたこと、それに変わりはないんだけど。
あの場に伊織がいたかなんてわからない。
なのにあんなこと言ってしまったことが恥ずかしくて。

「…伊織…」

奏太に告白され、動揺していたのだろうか。
それとも奏太を好きになっちゃいそうで逃げたのか。

…どっちにしろ、最悪。

一人で悶々と悩んでいると後ろから要ちゃんが来る。

「田中ー!」

「どした?」

「後ろ姿見て追いかけてきただけなんだけどね」

少し走ったのか息が切れている。
頬も少し赤くて、上目遣い。
…要ちゃんが好きだった頃のオレだったらきっと襲ってる、間違いない。

「もー!可愛いなー!」

「わっ…」

「…ん?
なんかいつもと匂いが違う」

「あ…たっちゃんの家泊まってそのまま来たから…かな」

「いやんハレンチ!」

「…や、やましいことはなにもしてないから!」

オレの冗談に更に顔を赤くしてわたわたしている。
…ほんと可愛い、小動物みたいな可愛さ。
池上がベタ惚れするのも頷ける。

「最近どーよ、喧嘩してない?」

「う、うん…」

「池上ってお盛んなの?」

「なんですぐそういうこと聞くのー…」

"反応が可愛くて面白いから"
なんて言うと怒られそうだったから言えなかった。





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