今、僕の目の前には田中がいる。
そう、僕の家で、僕と2人でいる。
「暑いねぇ」
「そうだねぇ」
「要ちゃん、あのね。
オレ病院行ったら何も異常なかったって」
「ほんと!よかったー!」
その報告をしてくれた田中は少し笑顔で。
後でたっちゃんにも報せてあげようと思った。
「もうすぐ夏休みも終わりかぁ。
…あいつとはクラスが違うから助かった」
以前田中は知らない人に襲われ、滅茶苦茶に犯された。
それは僕もたっちゃんも、そして伊織も知っている。
そりゃ元恋人でもまだ好きなんだから、あんなことあった後で合わせる顔がないのだろう。
「…また伊織と元通りになれたらいいね」
「んー…まだ好きだけどさ、正直もう恐いんだよね。
…犯された時のこと思い出しそうで」
…いらないことを言ってしまった。
男に恐怖心を抱くのは当たり前だったはずなのに。
また田中を落ち込ませ、自分で自分を怒りたい。
大好きな友達にこんな顔をさせてしまうなんて。
そう思った矢先に田中は僕を見て笑顔になった。
「要ちゃんは最近池上とどうなの?」
「えっ…」
「まだ前と同じくラブラブなんでしょー?」
「ら、ラブラブって…」
じっと僕を見る田中はまだ笑顔で僕の返事を待っていた。