「あっついなぁ…」
「ほんとにね」
終業式をするために体育館へ行く。
オレの隣には沙耶がいて、喋りながら歩いていた。
「そうだ、田中。
来週暇?」
「暇だけど」
「遊園地のチケットあるんだけど、一緒に行こうよ」
隣でにこやかに笑う沙耶。
断る理由もないので承諾した。
性格はサッパリしてて男前。
だけど結構美人な女の子。
男にモテるのも頷ける。
もし遊園地で誰かに見られたら…と思うと寒気がした。
長い終業式も終え、掃除の時間。
廊下に出ると、杏菜と要ちゃんが窓を拭いていた。
楽しそうに笑いながら窓を拭く2人は微笑ましく、自然と笑が零れる。
「…うわっ、田中がこっち見て笑ってる」
「おいこら杏菜ぁ、なんでそんなに嫌そうな顔してんだよ」
前までは苗字で呼んでたけど、いつしかオレは名前呼びになっていた。
杏菜も特に気にしてない様子だったので、苗字呼びに戻すつもりはない。
杏菜とじゃれていると、後ろから引っ張られる。
「こら田中!
自分の仕事しなさい」
振り返ると、少し怒った顔をした沙耶がいた。
「はぁーい…」
「ぷっ、ざまぁ。
沙耶ちゃんその馬鹿よろしくね」
「まっかせといて!」
「杏菜あとで覚えてろ!」
オレと杏菜のやりとりに、要ちゃんも沙耶も、少し笑っていた。