ソウセイジ
[1](1/19)
けたたましく鳴り続ける無機質な音に
若干の、いや、かなりのストレスを感じながら
アラームを止めるために手を伸ばす。
睡眠の世界に片足を突っ込んだまま
伸ばした右手は、
しばらく朝をかき混ぜてからやっと、
パシッ とスイッチを叩いた。
まだまだ起きようとしない頭に鞭を打って
ベットから身体を引き剥がす。
お父さんに無理を言って解体してもらった
二段ベッドは、
上段で寝ていたあの頃よりも、
随分と降りやすい。
早起きは三文の徳なんだから、
朝は余裕を持ちなさい。
って昔からお母さんに
よく言われてきたけれど、
あたしは古くさ、なんて思って
一度だってその教えを聞けたことがない。
だってあたしの代わりに、
その古臭い教えをもう17年も
律儀に聞き続けてる人がいるからだ。
時計の横に置いてある携帯電話を
手に取って部屋を出る。
家を出る何時間も前に起きて、
しっかり朝ごはんを食べて
お弁当を作って、
“ 行ってらっしゃい ”
の声をきちんと背中に受けて、
そういうことができるひとを
あたしはひとり、
知っている。
- 2 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
[編集]
[←戻る]