パラドール
[時雨に誓った男](1/4)
雨は予定通り、少し強くなった。スクリーンの路面は綺麗に水をはじいて用水路に流しているがそれを蹴散らすようにフェラーリが通った。

メイリーが好きな音楽を聴いて、雨を突っ切った。


2時間も走らせるとドームの端っこについた。

ここが多摩川 今は水が流れておらず記念公園になっている。 まだ綺麗だったあの時代を表すようにここには
植物が生い茂った森が隣にあり、水のホログラムが川だった窪地に流れている。

僕はそこに停車させて窓を開けると時間はすでに夕方だった。いつも仕事で使ったデータをここで消すんだ
やましい気持ちがあるわけじゃない。だけどここの方が嫌な思い出とか忘れられそうだからだ。

「ごほん、清道様 夕食が出来ましたいつ頃おかえりになられますか?」

僕が最後のメールを消そうとした時だった。メイリーからの立体モニターがタブレットから浮かび上がると
僕は指をふと止めた。

「え、あぁ今急な仕事が入ったんだ。悪いけどあと2時間は帰れそうにないかも。」

「・・・了解致しました。」

「ちょっと待って。」

僕は映像を切ろうとしたメイリーを止めた。

「メイリーはさ、今の暮らしに満足をしているの?」

するとメイリーはどこかで察していたのだろう。悲しそうな顔をして 後ろを向いた。

「何か辛いことがあったらお話ください。聞く気持ちは出来ていますから」

申し訳ない気持ちになった。

早く帰ろう。

僕は車のエンジンをかけると大通りに車を走らせた。


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