パラドール
[その心に意思はあるのか](1/5)
僕は一旦家に帰ってメイリーに事務処理の説明を始めた。

だがそれも数分の説明で済み、僕は午後から依頼を受けていた沢工場に向かう事にした。

「清道様、次の取引先のパラドールにアクセスが出来ません。 どうしたのでしょうか?」

「・・・心配はいらないさ、パラドールは何かあったらすぐに本社に連絡がいくし違法性はあり得ないんじゃないかな」

そう言うと僕は車に乗り込むとエンジンを入れた。
バックミラーに映った自分の顔は罪悪感に苛まされていたはずだ。






ドームの最端にある足立区に足を運ぶと一際でかい工場に車を止めると、僕はミント味のガムを食べた。
ここの刺激臭は正直公害だ。だが取引先は中にいる。

「来た来た!おそいよ!人形屋さん!大変なんだ早く見てくれ」

僕は汚れた50代の工務員に連れられると工場の中に入っていった。

息がつまるような煙の中にパラドールが横たわっていた。それは華奢で可愛らしいパラドールだった工業用のロボットだった。

脚は切り取られてキャタピラ、腕は油圧式のプレス機を取り付けられた自走式の戦車みたいなロボットだった。パラドールの最も重要な可愛らしい顔立ちも今は鉄仮面をかぶったような無骨な電極版が無剥き出しになっている。

それは叫ぶように肩のランプから異常発生を鳴らしている。どうやら過重が弱い体に負荷がかかり脳経路の回線が熱く焼けていた。

「大脳神経が・・・また無茶させたんですか!それに呼吸器官に異常なほどの異物が!」

キヨは震えた声で怒ると、工務員は腕まくりをして言い返した。

「うるせぇ!こんな使えねぇ代物売りつけやがって!
すぐに疲れたとか抜かしやがる!」

「・・・申し訳御座いません。すぐ治します」

これは結構昔、会社が倒産の危機に立たされた時にだった。この工場もまた潰れかけだった。工業用のロボットも稼働させればさせるほど赤字になった。そこで提案されたのがパラドールを工業用として改造、もちろん違法だが僕は一時の大金に目がくらんで、改造を引き受けてしまった。

それは事務所用のパラドールが就寝した時間を見計らい、現在に至った。

僕は今でも後悔をしている。彼女がまだ僕を恨んでいなければ、すぐにでも感情経路を全部修復して。罪を償う事が出来るだろうか。






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