傾国の美丈夫は馴れ合わない
[忘れてなんていませんよ](1/13)
夜、マサカズは紹介の為ウィラードを夕食に呼んだ。彼と話し合いの場を設けるというのは建前で、本音はウィラードを闇討ちしそうな過激派(ケディウス、ロウ)二人を牽制するというのが目的だ。
「特にケディウスさんは友達思いですからねぇ……」
良い事なのですが、と呟く彼の言葉を聞いている人がいたならば、これでもかと言う程首を振り、その目はちゃんと見えているのか?と言わんばかりに詰め寄るだろうが、生憎その勘違いを訂正する者はここにはいない。
最後の調理を終えテーブルに並べた時、リビングの扉が開く音がした。
「丁度良かっ……」
ウィラードの姿が見えたと思ったら、そのすぐ後ろにロウとグライア、そしてケディウスが続く。
ウィラードは両手を顔の位置まで上げ、マサカズを見ると困ったように眉を下げた。
そりゃあ背中にナイフを突き付けられていたらそんな顔をするだろう。
「…何をしているのです?」
「部屋に入ろうとしてたから捕まえた。どうする?やる?」
殺意が高い。
そんなちょっとゲームでもしようか、みたいなノリで生殺与奪を決めないで欲しい。いや逆に部屋の玄関前で流血沙汰を起こさなかった事を褒めるべきか。
他所へ飛びそうになる思考を戻し、首を振った。
「ダメですよ、私が彼を夕食に呼んだのです。」
「お前が?」
「ええ、食べながらで良いので聞いてください。」
訝しげに眉を顰めるケディウス達に、席に座るように促す。全員が座ったのを確認してマサカズは口を開いた。
「結論から言いますと、ウィラードさんはフィートさんの親衛隊を辞め、私と友人になりました。」
「ちょっと待て。」
すかさず口を挟んだのはグライアだ。
「話が急展開すぎる。どうしてそうなった?」
その言葉にロウは同意し、ケディウスは何も言わず話の続きを待っている。
「事の発端は四人で歩いていた廊下での出来事です。」
「金の教室前で喧嘩売られた時のこと?」
ロウの質問にマサカズは頷いた。
「あんなに横暴な人がいるなんてと思っていたら、ウィラードさんを仕向けて本人は高みの見物。そして自分の我儘や汚れ仕事は全て彼に押し付ける。実際お話ししているうちにウィラードさんが良い人だと分かったのでこれはチャンスだと」
「自分を殺しに来る奴が良い人だと?」
ケディウスがジロリと隣に座るウィラードを睨んだ。
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